労災保険給付を受ける為の要件とは?認定基準について解説
勤務中や通勤途中に負った怪我や特定の業務につくことで発症した病気のために、仕事を休んだり以前の様に働けなくなることがあります。そうなると、収入が減ってしまうでしょう。そのようなときに、保険給付を行う労災保険は労働者にとって大きな助けとなる制度です。しかし、労働者が労災保険給付を必要としていても、会社が申請に協力的ではないことも少なくありません。そこで知っておきたいのが、労災保険の対象となる労災とは何かということです。労災として認定される怪我や病気のことを理解していれば、労働者が泣き寝入りをせずに適切に申請ができます。今回の記事では、労災の種類や労災認定基準について詳しく解説をしていきます。
業務災害とは何か
業務災害とは、労働者の身に「業務上」の「負傷」「疾病」「障害」「死亡(傷病等)」といった災害が起きることです。ただ災害が起きたというだけでなく、災害と業務に一定の因果関係がなければいけません。労災保険が適用される事業場において、事業主の支配下にあるときに業務を原因とする災害が起きれば因果関係が合ったと認めてもらえます。
会社を休んでから3日間、労災保険給付は行われないのですが、業務災害であれば労働基準法に基づき事業主に休業補償が義務付けられています。また、業務上の災害で休業している労働者の解雇は、休業中とその後30日間まで原則として禁止です。もし解雇制限の期間中に、解雇しようとするならば会社は打切補償を支払う必要があります。
通勤災害とは何か
通勤災害とは、労働者が通勤しているときに発生した災害のことです。通勤災害において、業務に就くため、あるいは終えた後の移動を「通勤」と呼びます。「通勤」は住居から就業の場所までの往復だけでなく、複数の就業の場所を移動したり単身赴任者が帰省したりするときも該当します。「通勤」として認められるのは、合理的な経路及び方法を取ったときだけです。車や電車で移動しているときに、大きく迂回したりするときには合理的な経路を取ったとはいえません。また、酒に酔った状態や免許がないのに車を運転すれば、合理的な方法を取ったとは言えなくなります。
通常であれば「通勤」とされるような移動でも、業務の性質を有するとみなされると業務災害となることもあります。出張で事業場から離れた場所へ赴いたり休日出勤で呼び出されたりするのは、事業者の命令によって行われるということから業務の性質を有する移動です。通勤災害の場合には、業務災害と違い事業者には休業後3日間の休業補償を支払う義務はなく、解雇制限や打切補償などもありません。さらに治療費の一部負担金として、初回の休業給付から200円が差し引かれます。移動中の災害が通勤災害と業務災害のどちらに当てはまるのかを、正しく判断できるようにしましょう。
業務上疾病とは何か
業務上疾病とは、事業主の支配下にある労働者が有害因子にばく露した(さらされる)ことで引き起こされる疾病です。ここで「業務上」と認められるのは、就労の場所に有害因子が存在していること、健康被害を起こすほど有害因子にばく露したこと、発症の経過と病態という3つがポイントになります。有害因子とは、化学物質や体に負担がかかる作業など多くのものが該当する言葉です。その有害因子にばく露したときの濃度と期間、発症の経過と病態から医学的に業務が原因であると判断できるのかを確認していきます。発症の経過と病態ですが、症状がばく露してすぐに出るとは限りません。石綿(アスベスト)がもたらす健康被害のように、潜伏期間が数十年となることもあります。
労災認定基準
怪我や死亡などの災害に関する労災基準では、「業務遂行性」及び「業務起因性」という2つの要件に当てはまれば労災と認められます。「業務遂行性」は、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態を意味します。「業務起因性」は、災害の原因が業務であるという意味です。2つの要件に当てはまるケースは、大きく3種類に分類できます。1番目は事業主の支配下・管理下で業務に従事している場合、2番目は事業主の支配下・管理下にあるけれども業務に従事していない場合、3番目は事業主の支配下にあるけれども管理下を離れて業務に従事している場合です。
1番目のケースは労働者が勤務時間内に事業場で業務をしている状況であり、その最中に災害が発生すれば労災になります。勤務時間外でも個人的な用事をしているときに怪我をしたり、故意に災害を引き起こしたりすれば対象外となるので気をつけなければいけません。
2番目のケースは、事業場の中にいて休憩しているときなどに災害が発生することです。休憩していたとしても、事業場にいる限りは事業主の支配下・管理下にある状態であることは変わらないので、その状況で起きた災害は労災です。休憩中に、事業場の外へ食事をしに行ったり弁当などを買いに行ったりしたときの災害については、食堂が設置されていなければ労災になります。
3番目のケースは、出張で事業場から離れた場所に出向いているとか、営業で取引先を回っているときに発生した災害が該当します。事業主の目が届かないところにいたとしても、労働者は労働契約に基づき業務に従事しているとみなされます。なお個人的な用事で寄り道をしたときには、対象外となるので気をつけなければいけません。
うつ病などの精神疾患に関する労災認定基準は、認定基準の対象となる精神障害を発症していること、認定基準の対象となる精神障害の発症前6ヶ月間に業務で強い心理的負荷がかかっていたこと、業務以外に心理的負荷や個体的要因があり発症したとは認められないこと、という3つの要件があります。3つの要件を満たしているのかを確認するため、「業務による心理的負荷評価表」を用いて発症前6カ月の出来事を評価していきます。労災申請をするならば、評価をするために医療機関の受診が必要です。
労災はいつ起きるかわからない
労災は、いつどのような形で発生するのかわかりません。注意していたとしても、思わぬ形で怪我や病気になることがあります。そのようなときに、労災として認められるかわからないからと労災保険給付の申請をしないと、自分や家族の生活が苦しくなるだけです。今回紹介した労災とは何かという基本的なことに加えて、申請の方法や会社が申請に協力してくれないときの対処法なども調べておけば、労災が発生したときにするべきことがわかります。もし、わからない部分があれば、同僚や専門家などに相談をしてみましょう。また、実際に労災が発生したときには、労働基準監督署への相談をおすすめします。
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