過重労働による精神疾患も過労死等の原因に!その認定基準とは?
会社の業務などによる体調不良や精神疾患がもとで従業員が死亡した場合には、残業時間や業務内容などの調査を行った上で、過労死として労災を認定される場合があります。過労死といえば、働き過ぎによる脳や心臓の病気などがその原因として考えられがちですが、パワハラなどが原因でうつ病を発症して自殺するケースなども過労死等として扱われることがあります。この記事では、過労死とはどのようなものかを説明するとともに、過重労働などが原因で精神疾患に陥った場合、労災保険給付を受けるためにはどのような条件が必要なのかといった内容を解説します。
目次
過労死とは?
過労死とは、長時間の残業を続けたり休日もなく勤務を行ったりすることで心身に大きな負荷がかかり、精神的にも身体的にも疲労を蓄積させて死亡に至ることを意味します。脳梗塞、脳溢血などの脳疾患や、心筋梗塞、心不全などの心臓疾患などが引き金となって亡くなるケースのほかにも、パワハラなどといった業務における強い心理的負荷が原因となって精神に障害をきたし、うつ病などの精神疾患を発症して自殺するケースも過労死に含まれます。厚生労働省は、これらの精神障害を原因とする自殺も「過労死等」と定義して労災申請の対象に位置付けており、2014年には「過労死防止対策推進法」を制定して「過労死ゼロ」の施策を推進しています。
精神的疾患の労災認定基準とは?
精神障害を原因とする労災認定を受けるためには、クリアするべき認定基準があります。それは「対象疾病を発病したこと」「発病前の約6か月間に業務による強い心理的負荷が認められること」「業務以外の心理的負荷と個体側要因によるものではないこと」の3点です。
対象疾病を発病したこと
認定要件となる対象疾患の発病は、「ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン」に基づき、主治医の意見書や関係資料、関係者からの聴取内容などによって医学的に判断されます。そのため、あらかじめ病院などで診断を受けておくことが前提となります。病院などでの治療が行われていない場合は、関係者からの聴取内容を医学的に検討して発病の認定を行います。
発病前の約6か月間に業務による強い心理的負荷が認められること
強い心理的負荷があったかどうかをはかるポイントは、「特別な出来事があったかどうか」「時間外労働時間数が基準を超えていたかどうか」の2点です。そして、これらのポイントを判定するのに用いられるのが「業務による心理的負荷評価表」です。評価の指標は「強」「中「弱」の3段階に分かれており、総合評価が「強」と判断されると労災の認定要件を満たすものとされます。
まず「特別な出来事があったかどうか」について、判定表にはいくつかの事例が示されています。事例がそのまま当てはまる場合は総合判定が「強」となり、認定要件を満たします。「特別な出来事」に該当する出来事がない場合は、評価表にある「具体的出来事」の項目から体験した出来事に近いものを選んで「強」「中」「弱」の評価を行い、総合判定が「強」になれば認定要件を満たすことになります。出来事が複数ある場合は、個別の出来事によって感じる心理的負荷がそれぞれ「中」「弱」である場合でも、出来事どうしに関連性があれば「強」になるケースがあります。たとえば、一連のいじめにあっていて、それぞれの出来事の心理的負荷を「中」と評価したとしても、出来事の連続による負荷は「中」を超えると判断すれば「強」として判定します。また、出来事が複数あって、出来事どうしに関連性がない場合でも、負荷を感じた出来事の数や内容、時間的に近接しているかどうかで個別には「中」の評価でも、全体評価として「強」と判定するケースもあります。
次に「時間外労働時間数が基準を超えていたかどうか」です。総合判定が「強」となるのは、心理的負荷による精神障害とみなされる病気を発病した日から起算した直前の1か月間に、160時間を超える時間外労働を行った場合です。このほかにも、1か月に80時間以上の時間外労働を行った場合は「具体的出来事」とみなし、発病日から起算した直前の2か月間に月120時間を超える時間外労働を行い、業務内容自体が通常その程度の労働時間を必要とすると認められた場合は総合評価が「強」となります。月100時間を超える時間外労働が発病前の6か月間に恒常的に行われていた場合には、たとえ「具体的出来事」には該当していなくても、総合評価は「強」になります。
業務以外の心理的負荷と個体側要因によるものではないこと
これは、「業務以外の心理的負荷が発病の原因だったり、個人的な要因が発病の原因だったりしないこと」、あるいは「発病の原因が業務以外にあったり、個人的な要因に基づくものであったりしたとしても、医学的にそれらが明らかに発病の原因であると判断できない場合」をさしています。業務以外の心理的負荷がどのくらいの強度なのかを判定するには「業務以外の心理的負荷評価表」を用います。評価表に該当するものがなければ認定基準を満たすと認められ、「強」に該当するものがあったり、複数該当したりする場合には、医学的な判断に委ねます。個人的な要因が発病の主因となっているかどうかについても、該当事項があれば医学的な妥当性を検討して判断することになります。
うつ病をはじめとする精神疾患の特徴は?
労災の対象となる精神疾患としては、「器質性精神障害」「統合失調症」「適応障害」など10種類がありますが、中でも代表的な疾患は「うつ病」です。うつ病には、抑うつ気分や物事に対する興味の喪失、喜び感情の喪失、活動性の減退、疲れやすさなどといった症状があります。このほかにも、集中力や注意力が散漫になったり、自信がなくなったり、自分には何の価値もないのだと悲観的に考えがちになったりもします。眠れなくなったり食欲がなくなったりして、ついには自殺願望が芽生えることにもつながります。仕事をする中で、これらの症状に思い当たる場合は、早急に専門医に相談することが必要です。
職場での過重労働やハラスメントなどがもたらす精神疾患も過労死等の労災対象、その認定基準は3点
職場で精神的に過重な負荷を受けて、過労死に追いやられたり精神障害を受けたりした場合には、労災認定を受けられるケースがあります。認定基準は「対象疾病を発病したこと」「発病前の約6か月間に業務による強い心理的負荷が認められること」「業務以外の心理的負荷と個体側要因によるものではないこと」の3点です。精神的に追い詰められるとうつ病などの病気を発症することもあり、食欲がなく眠れない、元気が出ないなどの自覚症状が生まれます。その時はすぐに専門医にかかるとともに、過重労働やハラスメントなどの心理的負荷を受けている原因を取り除くために、早急に会社の担当部署に相談して、事態の打開を図ることが大切です。
労災事故の無料相談はこちら
お気軽にお電話ください
0120-122-138
【受付時間】8:00〜22:00(土日祝日含む)
労働補償給付を会社に代わって行います
労災隠しをしようとする会社、労災申請に非協力的な会社の場合、労災補償給付手続きがスムーズに進められない可能性があります。
この場合、弊所で労災補償給付の代行を格安で行います。